ベイヒルズSR通信 7月号「遺族厚生年金の見直しについて」「改正公益通報者保護法が成立しました」
遺族厚生年金の見直しについて
◆年金制度改正法案に対する意見
遺族年金の見直しをめぐり、SNS等に“5年で打切り”“大幅カット”といった投稿がなされ、国会議員に苦情が寄せられていると報じられています。
こうした反応を受け、厚生労働省は6月3日、「遺族厚生年金の見直しに関するご指摘への考え方」を示しました(6月11日更新)。
◆既に遺族厚生年金を受給している方等は見直しの対象外
以下①~④に該当する方は、今回の見直しによって受ける影響はありません。
給付内容は現行制度と同じです。
①既に遺族厚生年金を受給している方
②60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
③18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容
④2028年度に40歳以上になる女性
◆「5年の有期給付」について
見直し後は、60歳未満で死別した場合、原則5年間の有期給付となりますが、この給付には加算が上乗せされ、5年有期給付の遺族厚生年金の額は現在の約1.3倍となります。要件を満たす方は、中高齢寡婦加算も支給されます。
また、障害年金受給権者や単身で就労収入が月額約10万円以下の方は継続給付として引き続き増額された遺族厚生年金が支給され、収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整されます。
◆遺族厚生年金の男女差の解消
現行では、女性が30歳以上で死別した場合に無期給付となる一方、男性は55歳未満で死別した場合給付がなく、55歳以上で死別した場合、60歳から無期給付となります。見直し後は、男女ともに収入要件がなくなり、上記の給付が受けられるようになります。
改正公益通報者保護法が成立しました
6月4日に公益通報者保護法の一部を改正する法律案が参院本会議で可決、成立しました。公益通報者保護法は、従業員が公益のために事業者の法律違反行為の通報を行ったことを理由として解雇等の不利益な取扱いを受けることのないよう保護することを目的としており、下記について改正されます(公布から1年半以内に施行)。
◆フリーランスが「公益通報」の対象に
特定受託業務従事者(フリーランス)が公益通報者の範囲として追加されます。フリーランスや業務委託関係が終了して1年以内にフリーランスであった人が公益通報をしたことを理由に、業務委託に係る契約の解除等の不利益な取扱いをすることが禁止となります。
◆「解雇・懲戒」が刑事罰の対象に
公益通報したことを理由に従業員などを解雇や懲戒処分にする行為を刑事罰の対象とし、処分を決めた担当者には「6か月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金」を、法人には「3,000万円以下の罰金」を科すとしています。また、通報者が、通報後1年以内に解雇や懲戒を受けた場合は通報への報復を受けたと推定し、処分した側が「通報が理由ではない」と主張する場合はその立証責任を負うことになります。
一方、通報者への不当な配置転換や嫌がらせへの罰則については、今回の改正では見送られました。
◆その他の改正事項
消費者庁長官の事業者(常時使用する労働者が300人超に限る)への執行権限の強化として、事業者への立入検査権、勧告に従わない場合の命令権が新設されました。また、通報妨害の禁止、公益通報者を探索する行為の禁止が新たに規定されました。
施行までに改正内容を把握し、自社の体制や運用を見直していくことが必要となります。
>>出典【消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」】
>>ベイヒルズSR通信(2025.7月号)PDF版はこちらからご覧ください